考え

今の時代、私たちはあまりに正解を急ぎすぎているのかもしれません。
効率や数字の影で、いつの間にかこぼれ落ちてしまったもの。

例えば、かつての街角に溢れていた心地よい雑音や、計算のない誰かの優しさ。
私たちは、パンというささやかな存在を通じて、そんな人間らしい「隙間」や「温度」をもう一度手繰り寄せたいと考えています。

土の匂いを色濃く残す麦、その日の天候に委ねるしかない気まぐれな発酵。
そして、理想を求めて試行錯誤を繰り返す、不完全な人間。
そんな「揺らぎ」の中にこそ、人と人が真に響き合える豊かさが潜んでいるはずです。
ブレッドハーモニーが目指すのは、不完全ささえも包み込む、しなやかな調和(ハーモニー)です。

私たちが石臼を回すのは、命を丸ごといただくためでもあります。
選ぶのは、日本の厳しい風土の中で、農薬や化学肥料に頼らずに育てられた力強い麦。
粒のまま仕入れ、店内でゆっくりと粉に挽く。
そうして生まれた全粒粉には、麦本来の野性味あふれる香りと栄養が、嘘のないまま閉じ込められます。
それは、自然の摂理に身を委ねる、静かな手仕事の積み重ねです。

信念を持って麦を育てる農家さんの情熱に応えるように、私たちは麦から起こした野生酵母とともに、時間をかけてパンを育てます。
じっくりと発酵を待つ時間は、私たちもまた、大きな自然の循環の一部であることを思い出させてくれます。
焼き上がったパンを一口噛み締める時、あなたの日常に心地よい「ゆとり」が少しだけ増えることを願っています。