2025/11/18 07:38
運命的な出会い:種の交換会にて
物語は2019年、滋賀の種交換会から始まります。
小麦の種を握りしめたパン屋の店主が「実はパン屋なんです」と告白すると、
農家さんたちの中のひとり、
ヘンリーさん(元教授で牧師さん)は目を見開き「さ、探してたよ!」と喜びました。
それはまるで、互いを求め続けた魂の再会。
こうして、「小麦を育てたい男」と「小麦が欲しい男」の、長くタフな旅が始まったのです。
開墾:元教授、竹林との肉弾戦に挑む
ヘンリーさんが就農の地に選んだのは、奈良の「あいのあぶら農園」。
しかしそこは、誰も見向きもしなかった竹林が密生する耕作放棄地でした。
元々、頭脳と理論の人であったヘンリーさんが退職後に選んだのは、地下深くまで潜る竹の根との肉弾戦。
開墾はゼロどころか、「アカデミックな知恵が一切通用しない」マイナスからのスタート。
ヘンリー教授のセカンドキャリアは、予想外のハードモードから幕を開けました。
試練の連続:自然界からの容赦なき「ダメ出し」
開墾を終えても、試練は容赦ありませんでした。
1. 鳥害: 収穫直前の鳥の襲撃で、作物の過半数が「鳥のタダ飯」に。
2. 劣悪な品質: 収穫した実には、枝、石ころが混じる「まるで地質調査」のような選別作業。
3. 虫害: 選別後に虫が襲来し、努力が水の泡に。
しかし、牧師としての「諦めない強い信仰心」と、パン屋の「必ず報われる」という熱い信頼が(ただ信じて待ってただけ)、ヘンリーさんの背中を押し続けました。
結実:「魂の結晶」となったミナミノカオリ
そして今年、ついにすべての困難が報われました。
過去最高に豊かに実った「ミナミノカオリ」は、鳥も虫も竹の根も嫉妬するほどの美しさ。
これは、ヘンリーさんの情熱と、大地との孤独な闘い、そしてパン屋との固い絆が結実した「魂の結晶」です。
とはいえまだ使える品質になっただけという状態です。
というのも日本には高品質な麦の生産者さんが全国にいるからです。
そういった素晴らしい農家さんの整然とした美しい麦たちにはまだまだ及びませんが、
少しでも近づけるようにと二人の旅はまだ始まったばかりです。
☆現在お店の全粒粉には国内のスーパー農家さんたちの麦とヘンリーさんの麦をブレンドして使用中です。
物語が詰まったおすすめは、酸味を抑え、優しさが丸くなった小麦全粒粉パン「フォコンブロート」。
そして、一枚のパンが食卓を豊かにするデンマークの伝統的なライ麦パン「ロブロ」です。
どうか、この大地と人の絆の物語が焼き上げたパンたちを、あなたの日常に迎え入れてください。
ヘンリーさんの愛のあぶら農園の詳細動画🎥

収穫選別を終えた小麦を持って来店された
ヘンリーさん(左)とパン屋店主
